銀杏


大きなため息を吐いた。

暑…。

俺、あいつに喋っちゃったよ。
あんなに恨んでたのに。
本当は…雪乃が出て行ったのは半分あいつのせいじゃないか…て思ってる。
でも彼女がウチを出た時、咲がお腹にいたんだ。
きっとそれがわかって、これ以上いられないと思ったんだ。

じゃあ、その相手は?
俺が知らない奴なのか。
人見知りの雪乃が親しくしてた男…。
いくら考えても思いつかない。
もしかして……いや、調べて結果が出るまでは余計なことを考えるのはよそう。

透のことは話ができてよかった。
あいつも色々あったんだろう。
きっと今まで雪乃のことでまともに恋愛もできなかったんだろ。

俺はおそらく恋愛はできないな。
今もまだ雪乃のことが忘れられないから。

生きていればもう42歳か。
俺も34歳になった。
でも俺の中ではいつまでも若い雪乃でしかない。




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