銀杏
『この世の終わりが来た』
咲に言うと笑って聞いてた。
でも本当にそう思ったんだ。
それ程思い詰めてた。
きっと誰に話してもみんな咲のように大袈裟だと笑うのだろう。
雪乃…。
もっと一緒にいたかった。
高校を卒業したら、両親にも言うつもりでいたんだ。
それまでは内緒でいようと勝手に決めた。
でも雪乃は違った。
『そんなこと言ったら、ここにはいられない。』
絶対に言うなと口止めされて、頷かざるを得なかった。
あの時、俺は単純に両親が気に入ってる雪乃だから、反対どころか絶対賛成してくれると思っていて、雪乃の言葉に反感さえ覚えた。
でもそれは家政婦としてであって、息子の選んだ彼女という立場ではまた答えは違ってたんだ。
『長男だから』
理由はただそれだけ。
俺には良家の娘を…。
そんな古臭い封建的な考えが根強くあって、それに雪乃は相応しくないと思われていたみたいだった。