銀杏


今は時代が違う。そんな考えは現代にそぐわない。
何が駄目なんだ?
雪乃の素性がわからないからか?
両親がいないからか?
施設で育ったからか?

俺は両親に反発心しか湧かなかった。
上辺だけの取り繕った優しさ。
それを雪乃は感謝している。
何故だ!?
そんなの優しさじゃないじゃないか!
ただの偽善者だよ。



一刻も早く家を出たかった。雪乃を連れて。

………。

でもそんなことができる筈もない。

我慢するしかないのか…。



そんな時、その日は突然やって来た。

朝起きたら、『雪乃がいない』と騒いでいた。

また大袈裟な…。そんなことある訳ないだろ?買い物ぐらいじゃないのかよ。

のんびり構えていた。

でも短い手紙を見せられた。

『お世話になり、ありがとうございました。突然出ていくことをお許し下さい。』

たったそれだけ。

俺には何もないのか?
嘘だろ?
今日は4月1日じゃないよ。
何でそんな簡単に裏切れるんだ!?

俺はパジャマのまま裸足で家を飛び出し、探し回った。




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