銀杏
……まさか尊じゃ…ないよね?
もう止めて欲しい。
雑誌に取り上げたり、付きまとったり…。
尊をそっとしておいて。
みんなが騒ぐほど格好よくない。
どこにでもいる普通の男の子なの。
もやもやした気持ちで席に戻った。
試合はちょうど終盤で後1ポイントで終わりそうだ。
尊は?
昨日は出入口付近でスタンバってたのに…まだいない。
おかしいな…。家を出たのも早かったのに。
……あ、試合終わった。
尊…どうしたの?始まっちゃうよ。
落ち着かない。ハラハラする。
失格になったらどうしよう…。
相手選手がベンチ入りするとすぐ、尊は走って現れた。
よかった、間に合った。
どれだけ走ったんだろう?随分息が切れてる。
どこにいたんだろ。
『急いで』と審判に急かされたようだった。
試合が始まり、尊は順調そうに見えた。
ホッとしたのも束の間、だんだん苦しい展開になっていく。