銀杏
やっぱりここまで勝ち進むということは、みんな強いな。
そう簡単には点は取れない。
昨日の怪我だってある。今はまだ大丈夫そうだけど、いつ傷が開くかわからない。
早く決着つけばいいのに…。
今日はサポーターしてるんだ。そのサポーターが赤く染まらないうちに早く終わって!
試合の勝ち負けより、手の方が気になってイライラした。
時間が長い。早く終わってよ。
血は…嫌い。
祈るような気持ちで目を閉じ、ボールの音だけを聞く。
どのくらいそうしていただろう。頭に衝撃を受けてはっとした。
誰かが横にストンと腰掛け、じーっと顔を覗き込まれる。
「何してんの?」
尊は半ば呆れたような顔で咲を見る。
「え?何って…あれ?試合は…。」
「終わったよ。」
「手…手は大丈夫なの!?」
「…ああ。」
「そう…なんだ。よかった…。」
ほっとしてため息が漏れた。