銀杏
「…早く来いよ。」
後ろを振り返って鬱陶しそうな顔で咲を見る。
そんなに一緒に歩くのが嫌なら先に帰ればいいじゃない!
ふん!
ブスッと膨れてズンズンズンと俯き加減に大股で歩き、尊を追い越した。
ついてくんな!バーカ。
口では言えないから心の中で文句を言いながら、家に向かって歩く。
「…おい。」
無視無視。
尊だってやったでしょ?
無視されたらどんな気持ちかわかるでしょ。ふんっだ。
後ろからいきなり腕を掴まれて、気がつくと尊の腕の中だった。
「やだ…何すんの?こんなとこで……誰かに見られ…」
「しっ!じっとしてろ。誰かがさっきから付けて来てる。」
「…え!?」
「走るぞ。」
「…え、あ…。」
尊と手を繋いで必死に走った。
尊に引っ張られながら、本気を出されたら速くて追いつけないんだろうな、なんて考えていた。
…あ。
「…尊!家…通り越した…」
「いいんだよ。」
ええ―――!?
そのまま家の近くの曲がり角をぐるぐる回って家に慌てて入った。