銀杏
玄関で二人、肩をならべて息を整える。
「誰が…つけてたの?はあ…。」
「…さあ?見てねえから…はあ…知らね。多分撒いたと思う。」
俯いてじっとしたままの咲に気づいた尊は、優しく咲の頭をポンポンとして部屋の中に促した。
「…怖い。誰だか知らない人につけられるなんて…。」
「大丈夫だよ。家までつけられた訳じゃない。…俺が傍にいる。」
「…尊がつけられたんでしょ。私じゃないよ。」
「……お祝い…何がいい?」
あ、話題逸らした。
何を隠してるの?
私には知られたくないことなの?
「…考えとく。」
リビングを出て自分の部屋に入る。
はあ…。
尊は言いたくないことはすぐ隠す。
私に心配させたくなくて言わないのだとわかってる。
でも…中途半端に知らないのは余計に気になる。