銀杏


「サキと一緒じゃなきゃあそばない。行こサキ。」

トモちゃんは怖~い顔で咲を睨んだ。



いきなり頬っぺたに冷たい感触がしてはっとした。
見ると尊が缶ジュースを当てている。

「冷た…!…お帰り。何買ったの?」

「プリン。」

「またプリン?好きだからいいけど、たまにはケーキでも食べたい…」

「誰がお前のだって言った?」

「え?」

「いらないって言ったろ。だから買ってない。」

「ええ~!?これ頂戴。尊は甘いの好きじゃないでしょ。」

「…そんなに欲しいの?」

「うん!欲しい。」

「じゃあ、お前から貰うお祝いに上乗せな。」

「お祝い?何の話?優勝したのは私よ。だから…」

「俺は三位だからしない…ってか?」

ズイッと前に出て咲の腰辺りを跨ぎ、顎を掴んだ尊の顔は、目を細め口角を上げ、まるで獲物を追いつめた猫。

咲は追いつめられて怯えるミニーマウス…。




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