銀杏
〈尊side〉
気づいたのは、駅から少し離れた時だった。
つけられてるなんて咲に言うと不安がるから黙ってたけど、家の近くまで来て、これじゃ家がバレちまうと思って撒いた。
一体誰なんだ。どこからつけられてた?
まだその辺うろついてるかもしれない。
一発咬みついておこうとコンビニに行く振りをして家を出た。
近くに怪しい人物は見当たらない。
そういつまでも同じ場所にはいない…か。
少しばかりほっとしてコンビニに向かった。
店に入るとスイーツの棚へ真っ直ぐ進む。
さて…いつものプリンでいっか。
籠にプリンを一つ入れ、ジュースの方へ移動する。
俺はいつものスポーツドリンクでいいや。咲はどれにしよう?炭酸入りはもう引っ掛からないだろうし。グレープはないのか…。
「尊くん。」
顔を上げると…。
忘れもしない、大嫌いな奴が立っていた。