銀杏


「……何だよ。」

「素っ気ない返事。偶然会ったのにニコリともしないのね。」

偶然?本当に偶然かよ。

「へえ、プリンかあ。好きなの?私も買おうかな。」

勝手にすればいいじゃん。

適当に咲のジュースを選んでレジへ向かう。
支払いを済ませるとさっさと店を出た。

「あー、待ってよ。」

俺の後から小走りで追いつくと腕に絡みついた。

「はあ、歩くの速ーい!急ぐの?せっかく会ったんだし、少し話さない?水泳大会の時も話できなかったし。」

「放せよ!…ちょうどいいや。お前に話がある。さっき、後つけてたのお前だろ。何であんなことすんだよ?」

「やあだ。“お前”なんて。“ミッチ”て呼んでよ。
電車で見かけたのよ。
声かけようと思ったのに随分雰囲気悪いみたいだったから、様子伺ってただけよ?」

どうだか…。




< 539 / 777 >

この作品をシェア

pagetop