銀杏


中学の水泳大会で初めて一文字を知った。
表彰されて嬉しそうな顔が印象的で忘れられなかった。
高校で同じクラスになって、不安そうな顔をしてじっと席に座ってた。
声をかけると少し安心したのか、それまでの強張った顔は幾分和らいだ。
しばらくたって尊って奴の存在を知って、誰なんだとずっと思ってた。

学校での一文字と、あいつの傍にいる時の一文字の表情が全く違うと気づいたのは、あいつと自転車に二人乗りしてるのを見た時だ。
自然な感じでお互いを信頼しあってるのが感じられた。

それでも一文字に対する気持ちは益々大きくなるばかり。
ミッチの話に一度は乗ったけど気は進まなかった。

結果、彼女を泣かせることになったし、ミッチはあいつを怒らせた。

一文字とあいつの関係は以前より更に親密になってる。

いいことなんて一つもない。

なのにミッチは…。




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