銀杏


私がキス以上のことを望んでないということ。

でもそれは違うの。
尊が私を抱き締めて…キスして…触れたいと思うのと同じなの。
照れ臭くて言えない。
恥ずかしくて言えない。

こんなこと…女の子から言うのははしたない?
みっともない?
尊は…引いちゃう?

「…尊……あの…。」

「…何?」

胸に耳をつけた状態で返事をする尊の左手は、咲のお腹の上にある。

「…だ……抱いて…もい……よ…?」

「…え?何?よく聞こえなかった。」

これはわざと?
せっかく勇気を振り絞って言ったのに。

「だ…抱いても…い…」

言葉の途中でキスをされて最後まで言えなかった。
やっぱり引いた?
…言わなきゃよかった。

尊のキスに応えながら後悔した。

尊は唇を離すと咲を抱いて反転する。

「咲、俺を抱き締めて。」

腕を伸ばして首の辺りにしがみつく。
尊の首筋に顔を埋めた。




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