銀杏


〈尊side〉

「……母ちゃん。」

「何?」

「咲、どこ行ったの?」

「さあ、聞いてないけど遠出するとか行ってたよ。あの人は大人なんだし心配いらないよ。…気になるの?」

「…別に。」

尊は素っ気なく答えると階段を上がって行く。
しばらくすると下りてきて「クラブ行ってくる。」と家を出た。

「昼から…て言ってなかった?」

母ちゃんは首を傾げた。

「弁当つくってないからねー。」

と付け加えられた。

博貴さん…
弟の方じゃないから心配はしてない。
けど……
あの咲のはしゃぎよう。

何だよ。俺の時はいつも遅れてGパンになっちゃうくせに。
博貴さんが誘うと時間通り。
あんなにお洒落して…彼氏かよ?
あー、ムカつく!
俺のために一度でもワンピース着たか?

家を出て向かった先は通学途中にある河川敷。

草の上にゴロンと寝転んで空を見上げた。

薄いピンクのルージュを引いて…
パンブス履いて…
髪を巻いて…
腕を組んで…

あーもう!

頭をガシガシと掻いた。




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