銀杏
今まで一緒に住んでるなんて、誰にも言ったことがない。
名字も違うし、特に言う必要もなかったし。
同じ小学校出身の人は、国道で校区が別れたために数人しかいなかった。
だから、咲の事情のことなど知る人は誰もいなかった。
「…幼なじみなの。昔、二人とも親が働いてたから、よく二人で留守番した仲。」
「へえ、そうだったんだ。じゃあ…何とも思ってないんだ。」
「……。」
私は何とも思ってないことはないよ。ずっと昔から尊のこと…。
「尊くんてカッコいいじゃない。
テニスは上手いし。
狙ってる子、結構いるの知ってるでしょ?
あんまり仲良くすると睨まれるかもよ。
ファンクラブみたいなの作ってる子もいるみたいだし。」
「ぶっ。はは…何それ。ファンクラブ?まるでアイドルみたい。」