銀杏


軽くアップをしてラケットを振っていると、さっき声をかけてきた人が近づいて来た。

「へえ、随分使い込んでるね。君、名前何ていうの?俺は立原。あっちのキャップ被ってるのが木島で、白いポロシャツが尾上。」

「天宮です。天宮尊。」

「え?…ぷっ。あ、ごめん。す…凄いね。神様みたいな名前…。クックックッ…。」

こいつ…失礼な奴だな。普通、初対面でそんなこと言うか!?
前々から気にはしてたんだ。
でも誰も何も言わないから気にしないようにしてたのに。
くそっ!見てろよ。
こいつといい、咲といいムカつく!
俺はイラついてんだよ!

不満の吐け口を見つけたと言わんばかりに、ムキになってボールを打つ。

真剣に打つ尊に合わせて相手も本気になったようだ。
ラリーが続くけど少しずつ尊が押していく。
ポイントをつけてる訳ではない。
でも相手が音をあげるまでやるつもりでいた。

「ストップ、ストップ!」




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