銀杏
立原さんはラケットを振って合図した。
側で見ていた木島さんが言う。
「天宮くん、高校生?凄いね。俺たち、大学でテニス部なんだけど、中でも立原は強い方なんだ。あいつが負けるなんてね。」
「いやあ、参った。かなりの上級者とみた。どこの学校?」
立原さんの質問に答えるようにぐぅ~とお腹が鳴る。
鳴るなよ腹の虫!
慌ててクラブの時間だからと質問に答えることなく退散した。
後に残った三人もそろそろ引き上げるかと片付け始めた。
「あいつ…天宮やるじゃん。お前、高校生相手に負けてんじゃねえぞ。」
「何だよ木島。お前がやっても負けてたんじゃね?」
「ははっ、そうかもな。あれ、尾上どうしたの?」
「ん?あいつ…高校の全国大会に出てた奴だろ?変な名前だから覚えてた。」
「げっ!マジかよ?」
「スゲー奴誘っちゃったよ、おい。」
また尊が注目される原因ができた。