銀杏
〈咲side〉
お兄さんの車は青色の軽自動車。
小さい車の方が便利なんだとか。
乗り心地はとってもいい。
手入れが行き届いていい匂いがする。
どこへ連れて行ってくれるんだろう。
ワクワクしていた。
「どこ行くの?」
「山の方。紅葉はまだだけど、景色はいいかなって。」
途中、サービスエリアでお昼ご飯を食べた。
しばらく休憩した後、また車に乗って、目的地を目指す。
カーブの多い山道。荒っぽい運転をされたら、そんなに車に強い方ではないから酔ってしまう。
でも博貴の運転は急ハンドルや急ブレーキもなく、優しく運転してくれて酔うことはなかった。
どこまで行くんだろう。
窓を開けて新鮮な山の空気を吸う。
「後どのくらい?」
「う~ん、そうだな…。この峠を越えたら。」
道はまだ上り坂がくねくねと続いている。
時折、下っていく車とすれ違う。
車の中は特に会話もなく、静かな音楽が流れている。