銀杏
「ねえ、今日はどうして誘ってくれたの?」
「…いけなかった?」
「ううん、そうじゃない。お兄さん、いつもと違うから。」
「…そうか。咲にはバレてしまうな。……緊張してる。話をどう切り出そうか迷ってるよ。」
「話?…何の話?お兄さんのこと…それとも私?」
「……咲のこと。」
博貴は近くのベンチに腰かけた。
しばらく俯き加減で黙っていたけど、遠くを見つめながらボソッと呟く。
「咲は……父親のこと、まだ知りたいか?」
「……うん。知りたい。」
「それがどんな結果であってもか?」
「それは…どういうこと?」
博貴の話をじっくり聞きたくて隣へ座った。
「どこの誰かを知ってしまえば必ず会いたくなる。それがうまくいかなくても後悔はしないか、うまくいったとしても咲の思いとは全く違う場合もある。」
「…例えば?」
「相手に家庭があったら…どうする?」
「………。」
「会えたとしても誤解されたら?」
「………。」
「咲はどう思ってるかわからないけど、大人の思惑が絡んでる場合がある。そうすると辛いのは咲だよ。覚悟はしてるのか?」