銀杏


「………。」

そこまで考えてなかった。
ただ『会いたい』それだけ。
肉親がいるなら知りたい。
お母さんが『お父さんと私の似てるとこを見つけて嬉しそうにしてた』と聞いてから、会いたいという気持ちが募っていった。

単純に『会いたい』と思っちゃダメなの?
会っちゃいけないの?

気持ちは一気に沈んでいく。

でも考えると、百人いれば考え方も百通り。
お兄さんは私がたとえ傷ついても、それが最小限になるように、最初から覚悟が必要だと教えてくれてる。
私が軽はずみな判断をしないように守ってくれてるんだ。

「ありがとう。今まではもっと軽く考えてた。
そうだよね。家族がいるかもしれないもんね。
もしそうなら、今更『貴方の子どもです』なんて名乗られたら困るよ。
たとえわかっても、会わない方がいいこともあるよね。」

言いながら涙が溢れる。
自分の本心と違うことを認めなきゃいけないのは…辛い。
わかってるのに…わかってる筈なのに、何で涙が出るの?




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