銀杏
「咲。」
博貴はそっと肩を抱き寄せる。
「ごめん。泣かせるつもりはなかった。」
博貴の胸に額を当てて首を振る。
「い…いいの。…わ…私が…考えて……なかった…から…。」
博貴は咲の背中を擦りながら、泣き止むのをじっと待った。
スンスンと鼻を鳴らしながら徐々に涙が止まる。
「ごめんなさい。ありがと…。」
それまでずっと博貴の胸を借りてた咲はやっと離れた。
人目も気にせず胸を貸してくれて、頭を撫で続けてくれる博貴の優しさが嬉しくて、笑顔を見せた。
「…少しは落ち着いた?」
「ん…でも気持ちはまだ整理できない。」
「ごめん。キツい言い方したかも…。」
博貴のすまなそうな表情に首を振る。
「ううん。…だって本当のことだもん。変に遠回しに言われるよりずっといい。……でもそんな心配するってことは、お父さんかも…て思える人がいるんだよね?」