銀杏
「………。」
博貴は咲から視線を外し、遠くの景色を眺めた。
「…俺も咲と同じだよ。」
「……?」
「頭ではわかってるのに、気持ちが整理できずにいる。」
「…何のこと?」
「……雪乃のこと。」
「……。」
「本当はまだ信じられない。雪乃がいないことを。もしかしたらひょっこり現れるかも…て、思ってる自分がいる。
ここに来たのも、もう一度雪乃と一緒にこの景色が見たかったから。
前に来た時はまだ貴士が幼稚園ぐらいで、その時雪乃は随分感動してね。
その後、大人になって、夜景を見に一人で来たんだ。
綺麗だった。溢れ落ちそうな程、空一面に星が散りばめられて。
……雪乃が好きだったよ。」
「え?」