銀杏


〈博貴side〉

高台から望む景色は何もかもが小さくて、そこに本当に人が住んでるのかと疑ってしまう。

…でも確かにそこに人はいて、建ち並ぶビルへと吸い込まれ、吐き出されていく。

無機質に思える空間で人は泣き、笑い、喜び、悲しむ。

果たして人は幸せなのだろうか?

そもそも幸せとは何だ。

現在進行形の幸せも、この先不幸が訪れたならば、幸せと言えるのだろうか。

しかし、広い大地からすれば、そんなことは些細なこと。

周りに左右され、右往左往するなんてバカらしい。

漠然としたものほど不確かなものはない。

しっかりと足元を固め、揺るがないようにまっすぐ前を見据えて先を見ろ。
回り道をしてもいい。
引き返してもいい。
だが目標を見失うな。

俺はお前の足下を照らす光になろう。

籠の中で怯え小さくなっていた俺に、窓の外は明るいと教えてくれたように。

今度は俺の番だ。




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