銀杏


帰りの車の中は行く時と違って静かだった。

聞くとはなしに、一方的に喋り続けるラジオ。
咲はずっと外ばかり眺めている。

何を考えてる?

父親のことか?

……。

咲に覚悟を決めろと言った。
でもこうして検査を受けると言った咲よりも、俺がまだ迷ってる。
結果を知るのが怖い。
雪乃が誰を選んだのか、知りたい気持ちと知りたくない気持ちが混ざりあって…複雑だな。

高速を下りて真っ直ぐ咲の家には向かわなかった。
まだ気持ちの整理が着きかねている筈だ。
少し遠回りをすることにした。

そのうち景色が行きと違うことに気がついた咲が俺を振り返る。

「…どこへ向かってるの?」

「…さあ…どこがいい?」

「……。」

「…まだ大丈夫じゃないだろ?……俺から天宮さんに話そうか。」

「……。」

「結果が出てからでもいいかと思ったけど、咲が落ち込んだままだし、そんな暗い顔では心配させてしまう。このまま伺うよ。」




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