銀杏
10分も走らないうちに咲の家に着いた。
出迎えてくれたのは天宮さんの奥さん。
「おかえり咲ちゃん。北条さん、ありがとうございました。ご迷惑をおかけして…」
「いえ。あの、少しお話があるんですが…お邪魔しても?」
「…はあ…何かしら?」
奥さんは怪訝な顔で家の中へと案内してくれた。
「夫は出掛けて留守ですけど…。」
お茶を出しながら遠慮がちに口を開く。
以前、天宮さんには検査のことや思い当たる相手のことも話してある。
「突然で申し訳ありません。咲さんのDNA鑑定の許可を頂きたくて伺いました。」
「…DNA…鑑定…?。」
「はい。彼女の父親かもと思う人がいるので、調べてみようと…。」
「……。」
「咲さんだけの意見で検査するより、親代わりである天宮さん夫婦の許可も頂きたい。」
「でも夫は今…」
「以前、お会いした時に『任せる』と言って下さいました。」
「…そうですか。」
奥さんはいいとも、否とも答えない。
俯いて考えてる様子だった。