銀杏


〈咲side〉

リビングに入るとおじちゃんと尊は食事を終えたところだった。

三人の視線が咲に集中する。

「おかえり。遅かったね。送ってもらったの?」

おばちゃんの質問に黙って首を横に振った。

「え?送ってもらわなかったの?」

「…だから言ったろ?安心できないって。」

尊がそっぼを向いて呟く。

「…向こうの家を出てから寄り道してた……。ごめんなさい。」

俯いて小さな声で答える。

「咲ちゃん。最近、北条さんちに行くといつも遅いね。寄り道で遅くなってるの?」

コクン…と頷いた。

「何をして遅いの?」

顔を上げておばちゃんを見ると、眉間にシワが寄ってる。

「あ…あの、お兄さんが検査の結果が出たから、おじちゃんやおばちゃんも一緒に報告したいって。ウチに来るのいつだったらいいか…て。」

みんなの表情が急に変わった。

「……咲ちゃんは…聞いたの?」

「……うん。教えてもらった。」

「…そう…。私たちが知ってる人?」

コクンと頷く。

「…誰…なの?」

「………。」

おばちゃんもおじちゃんも尊も咲の返事を待った。

「咲ちゃん。ゆっくりでいいよ。まずは座って落ち着きなさい。」



< 594 / 777 >

この作品をシェア

pagetop