銀杏
おじちゃんに促され、自分が立ったままなのに気づいて、尊の隣のいつもの椅子に座った。
おじちゃんは落ち着いた表情で、おばちゃんは身を乗り出すように咲を見る。
尊はそっと咲の手を握った。
しん…とした空間でみんなが息を飲むのがわかる。
「…あの…お兄さん……お兄さんが…お父さんだった。」
「え…。」
尊が驚いた顔で咲を見る。
おじちゃんは大きなため息をつき、おばちゃんはテーブルに肘をついて、指を組んだ手に額を当てた。
「咲、どういうことだよ!?咲の母ちゃんはただの家政婦さんだったんだろ?」
「…うん。私にも何が何だかよくわからない。」
おじちゃんが助け船を出すように話す。
「咲ちゃんの水泳大会の日に北条くんが来ただろう。あの日に聞いたんだが…」
おじちゃんはお兄さんがお母さんのことをどう想っていたか、話してくれた。
「お互いにどういう気持ちだったのか、詳しいことは聞いてないよ。
彼がウチに来るならきっとその辺のところも話してくれるだろう。
日を相談して、決めたら咲ちゃんが北条くんに連絡してくれるかい?」
「…はい。」