銀杏
咲のトラウマ
秋も深まり、銀杏の木々が綺麗な黄色に染まる。
廃線になった線路脇に沿ってまっすぐ道路が伸び、その街路樹の銀杏は1.5kmに渡って並木道を作る。
日だまりのような黄色が色鮮やかに、赤レンガの歩道に彩りを添える。
小さい時、まだお母さんがいた頃。
保育所からの帰り、この並木道で銀杏の葉っぱをたくさん拾って帰ったっけ。
帽子の中にいっぱい入れて、その葉を何枚も重ねて束ねると、まるでバラの花のようだった。
髪飾りにしたり、ブーケの代わりにして、「可愛いお嫁さん!」て言って遊んだ。
「咲は誰と結婚するのかなあ。」
「えーとね、タケルくん。」
「あら。尊くんが好きなの?一番仲良しだもんねえ。」
「うん。でもサキはお嫁さんじゃなくて、お姫様になるんだよ。」
「そっか。じゃあ、尊くんは王子様?」
「うん。そう。」