銀杏


「尊、おじちゃんでなかったら尊でしょ?……見ーたーなー!?」

首をブンブン振りながら両手を振って「見てない見てない!」を連発する。

「嘘!」

「ホントだって!目、閉じてた!」

「……目ぇ閉じててどうやって引き上げるってのよ!!」

手当たり次第に枕やクッションを投げつける。

「ち…ちょっ…ちょっと待てって。あのままほっとけないだろ?母ちゃんだけじゃどうにもなんないし。父ちゃんがよかったのかよ?」

う…それも困る。

どっちも嫌――!!

目に涙が溜まって次に投げようとしてたバスタオルを顔に当てた。

「だって…だって…うわ~ん!!お嫁にいけなかったら尊のせいなんだから!責任取ってよね!」

ぷりぷり怒って布団に潜った。


布団の中でぐしぐしと泣く咲に、尊は小さな声で「臨むところだ。」と呟いた。




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