銀杏
「いいえ、何も。
…北条さん、今更理由を詮索しても意味がないわ。」
…意味がないって…どういうこと?
おじちゃんもおばちゃんも渋い顔をしている。
咲の頭は疑問だらけ。
自分のことを知りたいのになぜそんな顔をされるのか、不信感でいっぱいだった。
「…そうだな。これからどうしていくつもりだい?」
おじちゃんまで…。
理由を知りたいと思うのは意味がないの?
何で?
少なくとも私にとっては大事なことだと思うのに…。
お兄さんは椅子から下りて膝をつき、両手を着いて深々と頭を下げた。
「北条くん?一体何を…」
「知らなかったとはいえ、長い間咲を育てて頂きありがとうございました。お陰様で優しい素直な子になり感謝しています。
部屋に籠っていた僕を連れ出してくれた咲の優しさは、雪乃に似ているような気がして…。
咲、改めて礼を言うよ。
ありがとう。」
首を横に振った。
「天宮さん、厚かましいお願いなのは承知です。このまま咲を面倒みて頂けますか?
家族として暮らしてきた咲を引き離すことはできません。
ただ認知はしたいと思っています。
よろしいですか?」
「……」