銀杏
―――認知。
少し前まで私には縁のない言葉だと思ってた。
これで戸籍には父親の欄に名前が入るんだね。
おばちゃんはさっきから顔を背けている。
おじちゃんは気を使ってか、おばちゃんをこずいてる。
おばちゃん、どうしたの?
「…あの、天宮さん…?」
お兄さんもおばちゃんの様子に気づいて声をかけた。
それに堪り兼ねたように、おばちゃんは「ごめんなさい。」と言うと立ち上がり、リビングから出て行った。
「紗智っ。」
おじちゃんはお兄さんに向かって「ちょっと失礼するよ。」と立ち上がり、おばちゃんを追った。
部屋に残されて気まずい空気が流れる。
「……咲は…認知すること、どう思う?」
「…認知すると、今までと何が変わるの?」
「……戸籍に父親の名前が加わるだけだと思うけど。」
「…そうだよね。おばちゃんは何が気に入らないんだろう。」
「……」