銀杏


『親は私たち』

この言葉に紗智は落ち着きを取り戻したようだった。

紗智の気持ちはよくわかる。
だが認知をしたからといって、そんなに咲ちゃんの気持ちがすんなり変化するとは思えない。

しかし、北条くんやその家族が何と言うか…。
きっと北条くんの家ではこれからが大変なんだろう。
しばらく様子をみないとな。

リビングで深く座ると大きく息を吐き、天井を見上げて目を閉じた。



カチャ…

扉の開く音がして振り向くと尊が立っていた。

「…父ちゃん。珍しいじゃん、ゆっくりしてるの。今日、博貴さん来たんだろ?どうだった?」

「……尊は咲ちゃんのことどう思う?」

「…どうって…。何だよ今更。知ってんだろ?」

「…ああ、そういう意味じゃない。北条くんが父親と知って、咲ちゃんはどう思ってるんだろうと思ってね。」

「さあ、特に聞いてないよ。……でも何となくだけど喜んでるっていうか…安心してるような感じがする。」




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