銀杏


「でも、今北海道へ連れて行くって…」

「兄貴はもうここにはいないよ。
出ていった。
兄貴がいないのに何を遠慮することがある?」

「そんな…!約束したんでしょう!?どうして破るようなことするの?
お兄さんがどんな気持ちでそんな約束をしたのか、考えたことはありますか?
私は…私の気持ちは無視ですか?」

「じゃあ言うけど、俺の気持ちは?
誰が理解してくれるって言うんだ!?
…兄貴が雪乃さんとできてたと聞いた母の気持ちは?」

「私は…仕返しのための道具ですか……?」

「……」

「本当の親子なのに…どうして?認知をしないことと、お兄さんと連絡が取れないこととどう関係があるの?…何で邪魔するの!?」

悲しくて…
…でも何で悲しいのか…
北条さんがここまでお兄さんを憎むのはなぜ?
それが悲しい。
血の繋がりがなくても、たった二人の兄弟。
お互いを信頼しあった時もあったでしょ?
涙が出るのは何のための涙なのか…




< 624 / 777 >

この作品をシェア

pagetop