銀杏
「…お兄さんはどこ?」
「……いいじゃないか兄貴のことなんか。兄貴はこの家を…家族がバラバラになる原因を作ったんだ。俺も母さんも兄貴の顔なんか見たくない。」
「…北条さん。家族がバラバラとか…私には何のことだかわかりません。説明してもらえませんか?」
「構わないけど、誰にも口外しないで欲しい。これは家の中の恥だから。それと…」
こんなこと誰にも言わない。
でも二つ目の条件は……
「君は俺のものになること。」
そんな…!
どこまで可哀想な人なんだろう。
そんなにまでして私が欲しいの?
……きっとこの人は私のことが好きでも愛してはいない。
心の底から私を大切に想ってはいない。
お兄さんを苦しめたいだけ。
「兄貴は養子だよ。
ずっと知らなかった。
両親は結婚してもなかなか子どもが授からなくて、不妊治療してたらしい。
諦めて兄貴を養子にしたら10年後、俺が生まれた。」