銀杏
「両親は当然俺を可愛いがるし、兄貴が邪魔になったんだ。」
…だからお兄さんは母親の愛情をお母さんに求めたの?
「兄貴は雪乃さんを独り占め。参観や運動会、全て雪乃さんが行ってたよ。
俺だって雪乃さんに来て欲しかった。
周りの親より若い雪乃さんを自慢したかった。
雪乃さんに褒めて欲しかった。
でもそれは叶わなくて…。」
すれ違った心は修復されることなく、お互いの気持ちをぶつけることもなく、小さな綻びがだんだん大きくなって…
もう無理なの?また家族として一緒になることはないの?
「…君は父と会ったことないだろう?
いくら忙しいと言っても一度も会わないなんて、おかしいと思わなかった?
父は…浮気してたんだ。
母はそれを承知で我慢してた。
でも兄貴の話を聞いて我慢できなくなった。
そりゃそうだろ?
まだ高校生で人生これから…て時にめちゃめちゃにされてたんだという思いが…雪乃さんに向けたくてもできなくて、君という子どもまでいたんだから。
二人の男に…家族だと思っていた男に騙されたと言ってたよ。」