銀杏


「あの…ハナちゃんは?」

「…死んだよ。」

…え?まさか。

「だってあんなに元気だった…」

「元々、兄貴が可愛がってた。もらってきたのも兄貴。
兄貴が出ていった3日後の朝、眠るようにドッグハウスの中で…。」

ハナちゃん…。

「何でそうなったのか理由はわからないけど、兄貴がいなくなった寂しさからじゃないかな。言葉は通じないけど感情は察知するからね。それにもう年だったし。」

もう…何もなくなってしまった。

お母さんも見たであろうお兄さんの部屋から見えた公園。
お母さんが写ってる北条さんたちの小さい頃のアルバム。
お母さんが好きだったブドウのジュース……。

この家での思い出はなくなってしまう。
お母さんの思い出が…また一つなくなる。




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