銀杏


もしかしたら、人は不幸の中にいて、時々やってくる幸福に喜びを感じるのかもしれない。
その幸福のために不幸も乗りきれるのかもしれない。
でも不幸は突然やってくる。
どうすればいい?
心に穴が空いてしまうと、そこから幸せは零れ落ちていく。

感情をぶちまけたら…楽になる?
………
でもね、声を出したいのに出ないの。
いつからこんな泣き方だった?
もっといっぱい泣いてたのはいつのこと?

その時、頭の中に浮かんだのは夢の中で言われた言葉。

『もっと感情を出しなさい』

どうすれば気持ちが出せるようになるのかわからない。

私一人では何もできないし、どうすることもできない。
お母さんの思いが込められた名前も…咲くことなく散ってしまいそう。

誰か助けて。
もう足が前に進まない。
俯いたまま映る地面はぼやけてよく見えない。




< 630 / 777 >

この作品をシェア

pagetop