銀杏


車のクラクションでハッとした。
横断歩道の真ん中で立ち止まっていて、信号は赤になってる。

ど…どうしよう。

オロオロしているところへ、誰かがぐいっと手首を掴んで引っ張ってくれた。

渡った直後、車がイライラしたように勢いよく走り去っていく。

よかった…。

「あ、ありがとうござい…」

顔を上げるとその人から洩れた言葉は―――

「ひでぇ顔だな。」

―――だった…。



その人に連れられて、近くの公園までやって来た。

「いい天気だなー。」

大きく伸びをしながら息を吐く。

咲が腰かけるベンチの隣に座った。

「どうしたんだよ?元気ないな。」

「さっきはありがと。考え事してたら信号に気づかなくて。」

「ホント、危なっかしい。車に轢かれるぞ?
それにしても、何でそんな顔してんだよ。
まるでこの世の終わりみたいな…」

「…そうだね。ひどい顔だからあんまり見ないで。」




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