銀杏


母ちゃんの心配は当たり前で、納得できるような説明ではない。

俺にちゃんと話してくれるだろうか。

不安に思いながらも咲の部屋に向かった。



部屋の前まで行くと扉は開け放たれていて、ベッドの上に膝を抱えて座ってる。
部屋に入ると「閉めて」と言った。

「…何?」

ベッドに腰かけて咲の話を待った。

「…人は…不幸の中にいて時々やってくる幸せに喜びを感じるのかな…?」

…何の話だ。
不安定な気持ちの咲に迂闊なことは言えない。
何て答えればいい…?

「…誰にも言わないって約束した。でも……私一人では抱えきれないの。そんな時はどうすればいい…の?」

「話せよ。俺たちは家族だろ。咲の悩みは家族みんなの悩みだよ。誰にも言わないというのは、家族以外に話さないということだ。だから…話して。」

少しだけ安堵の表情を見せたけど、また悲しい顔をして俯いた。

「あのね…」

ゆっくりと話始めた。




< 638 / 777 >

この作品をシェア

pagetop