銀杏
母ちゃんの心配は当たり前で、納得できるような説明ではない。
俺にちゃんと話してくれるだろうか。
不安に思いながらも咲の部屋に向かった。
部屋の前まで行くと扉は開け放たれていて、ベッドの上に膝を抱えて座ってる。
部屋に入ると「閉めて」と言った。
「…何?」
ベッドに腰かけて咲の話を待った。
「…人は…不幸の中にいて時々やってくる幸せに喜びを感じるのかな…?」
…何の話だ。
不安定な気持ちの咲に迂闊なことは言えない。
何て答えればいい…?
「…誰にも言わないって約束した。でも……私一人では抱えきれないの。そんな時はどうすればいい…の?」
「話せよ。俺たちは家族だろ。咲の悩みは家族みんなの悩みだよ。誰にも言わないというのは、家族以外に話さないということだ。だから…話して。」
少しだけ安堵の表情を見せたけど、また悲しい顔をして俯いた。
「あのね…」
ゆっくりと話始めた。