銀杏


「お兄さんが私の父親で…その話がきっかけで……お兄さんは養子で…北条さんは取引……おばさんは…離婚…。家を売って、借金…。」

咲の話は訳がわからない。

「咲、一つ一つ整理しよう。
誰が養子だって?」

「…お兄さん。」

本当に?



話を訊いていくうちにだんだん繋がってきた。

博貴さんが咲の父親だとわかって、北条のおばさんは夫の浮気も手伝って、家族が信じられなくなった。
だから今まで隠していた養子のことも暴露した。

そして北条さんは咲を諦める代わりに認知を認めなかった。

つまり博貴さんは『家族』にも『父親』にもなれなかった。

咲の母ちゃんと一緒になることもできずに、今、一人でどうしているのか…。

何もかも奪われて何が残ってる?

思い出だけ…か?

博貴さんの幸せはこれからだったのかもしれないのに。
咲の傍にいたかっただろうに。




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