銀杏
寂しさの行方
私たちは高校を卒業し、それぞれの進路に進んだ。
尊はプロテニスプレーヤーとして、咲は水泳を続けるために大学に進学した。
咲は寮に入り、初めて尊と離れた生活が始まった。
毎日水泳漬けで他のことを考えてる余裕がない。
あっと言う間に時が過ぎていく。
あれからお兄さんの消息は掴めないままだ。
突然いなくなったことを考えると、母親がいなくなったのと状況がよく似てる。
あの時、お兄さんはあちこち探して見つからず、結局近くで知人に身を寄せていた母。
もしかしたら同じように近くに住んでるのかも…なんて考えたこともあった。
でも漠然とした考えより、水泳を頑張って注目された方が、咲のことをお兄さんに知ってもらえる可能性が高い。
そう考えて必死だった。
頑張れば頑張る程、距離は近くなるように思えた。