銀杏


寮に入って、忙しくしてたら尊のことも、お兄さんのことも考えなくて済むと思った。

確かに考えてる暇はない。

だけど…

夜、ベッドに入ると思い出す。

尊と寝る前にいっぱい話したこと。
抱き締められたこと。
……キスしたこと。

まざまざと脳裏に浮かんで、尊の代わりに枕を抱き締める。

私が強くなったら会える?
尊がすっごく有名になったら会える?

…わからない。

今更ながら友美の寂しさに気づく。

こんなに寂しいんだと。
こんなに辛いんだと。

尊…好きだよ。
大好き。

愛してる。

いつだったか『愛してる』と言ってくれた時、恥ずかしくて、照れ臭くて、返事ができなかった。

今なら言える。
自信をもって…愛してる、と……。




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