銀杏


先輩からの連絡はほとんどないらしい。日本とは昼夜逆転らしく、電話やスカイプはできない。
友美にとっては梨の礫(つぶて)だ。

『今度会ったら無視してやる!』

なんて息巻いてたけど…きっと無視どころか胸に飛び込んでわんわん泣いてそうだ。

一方尊はというと、在学中からプロとして登録し、試合に出る毎に付くポイントを稼いでいた。
ポイントを稼ぐことで出場できる試合が増える。

登録する人はそんなに多くはないけれど、その中から抜きん出ようとすると、かなりの試合数をこなさなければならない。

家には帰るものの、すぐにまた出ていくし、ちっとも家にいないとおばちゃんが溢してた。

……逢いたい。

尊はどうなんだろ。
私と同じように逢いたいと想ってる?

声が聞きたい。
触れたい。
………。

堪えた筈の涙が頬を伝う。
寮に入ることを決めた時、泣かないと誓ったのに。
こんなんじゃ『咲の泣き虫は変わらないな』て言われそう。




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