銀杏


……そうだった。尊には何でもバレちゃうんだった。

「声…聞いたら…」

『逢いたくなったか。』

「……うん。」

『でもちょっと話しただけでこんなに泣くのに、逢ったらどんなだよ。』

「…涙の海ができて……溺れるかも。」

『お前いくつになった?』

「…どうせ子どもだって言いたいんでしょ!スポーツする人間がそんなことでメソメソするな。もっと強気になれ。」

『泣くななんて言わねえよ。ただその弱みを誰にも見せるな。…俺だけな。』

「…うん。」

『また電話してこいよ、日付が変わる前にな。今日は遅すぎ。もう寝るわ。おやすみ。』

「…おやすみ。」

……こっちからかけた電話なのに。
尊から切っちゃった。
でも…しゃーないか。かけるつもりじゃなかったし。

…少し落ち着いた……と思う。
やっぱり尊の傍がいい。
今は我慢しかないのかな。

また、電話していいって。
今度はもう少しゆっくり話したい。




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