銀杏


両親の離婚、博貴が養子だったこと、貴士が北海道へ行き、家には誰もいないことなんかを話した。

「…そうか。随分色々と詳しいな。」

「すみません。
でも咲が貴方の弟から聞いてきたことなんです。
…博貴さん。
お願いだ。咲に連絡して下さい。今、大学の寮で生活してて…」

「寮?寮に入ってるのか。君と離れて暮らすとは意外だな。あの家に住んでると思ってた。」

「あいつにしては頑張ってると思いますよ。寂しがり屋だし、甘えたで、泣き虫で…。なのに電話もかかってこない。だから博貴さんからの連絡はきっと…」

「尊くん。俺はね、咲が幸せでいるならそれでいい。
俺は貴士を不幸にしたんだ。俺だけ幸せになることはできない。」

この言い方にカチンときて、ムッとして眉間にシワを寄せた。

「じゃあ、言いますけど、咲はどうなんですか!?
貴方は弟が不幸になった分、自分も不幸になればいいと思ってるんですよね?
でもそれが咲を不幸にしてるんだ!




< 656 / 777 >

この作品をシェア

pagetop