銀杏


いつも一緒にいたのに…。
卒業しても一緒にいれるとは限らない。

運よく自宅から近いところで水泳ができる企業へ就職できたとしても、尊はプロだもん。どうなるかわからない。
みんなに…逢いたいな。

尊に…逢いたい。

ケータイの待ち受け画面をじっと見ていたけど…ホームを下り、向かいのホームへと移動した。

そしてやって来た電車に迷わず乗った。

吊革に掴まって窓の外を眺める。
ネオンが映る。
時刻は22時少し前。
休日のこんな時間は電車も空いてる。
椅子に腰かけてメール作成画面を開いた。

けれど…そのまま閉じた。

…よく考えたら今から行ったところで逢えないかもしれない。

…でも…でも…
気持ちは押さえられなかった。
理性より、気持ちが先走る。

駅に着いて、久々の道を歩く。

何にも変わってない。
新しいお店とかできてるかと思ってた。

その変わらなさに安堵感を覚える。

まっすぐ目的地へ向かった。




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