銀杏


近づくにつれドキドキして、門の前まで来た。

大丈夫。まだ明かりは点いてる。

おずおずとインターホンに手を伸ばす。

その時、中から誰かが出てきた。
伸ばした手を引っ込めて物陰に隠れるように身を潜める。

出てきたのは尊だ。
コンビニでも行くのかな?

家を出てから一度も逢ってない。
背が少し伸びたみたい。
何だか懐かしいような気さえする。
驚かそうか…
後ろからそっとついて行く。

たった今歩いて来た道を引き返すように駅に向かう。
尊は突然駅前のコンビニの前で足を止めた。

タイミングを見計らってたのに、急に止まってしまうとどうしていいのか分からなくなる。

オロオロしてると尊の声が響いてドキリとした。

「何しに来た?」

冷たい、突き放すような口振りにすぐに答えることができない。

知ってたの?
いつから?

訊きたいのに声にならない。




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