銀杏


〈尊side〉

その日の朝、咲は散歩に行くと言って家を出た。

銀杏が色づく頃になると、咲は時々一人で散歩に行く。

一体どこへ何をしに行ってるのか。

気になって一度だけ後をつけたことがある。

ゆっくりと線路沿いの道を歩いていた。

立ち止まって何かを拾い上げると、被っていた帽子の中にそれを入れた。

1.5km程続く並木道は、普通に歩くと15分もあれば向こうの端に着いてしまう。

でも咲は少し歩いては止まり、また少し歩いては止まるというように、ちっとも先に進まない。

お気に入りのものがたくさんあるのか、一ヶ所でしゃがんだまま、立ち上がらなくなった。

咲?

少しだけ咲に近づくと、背中を丸めて膝に顔を埋め、体を震わせているのがわかった。




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