銀杏


すれ違いの日々も多いけれど少しずつ埋めていけばいい。
そう思っていた。



以前、友美に返してもらった宝箱。

この間クローゼットを開けた時に見つけた。

忘れてた。
あの時はすぐに開けて確かめたくなかったんだっけ。
これはお母さんのいなくなった日に繋がるから、思い出したくないことまで出てきそうで…。

尊は覚えてるんだろうか…?

尊の部屋には明かりが点いてる。
ノックをしてみた。

コンコン…

………

返事がない。
もう寝たの?

部屋に戻ろうとしたら、『何?』と潜もった声が返ってきた。

「あ、あの…一緒に見て欲しいものがあるの。入っていい?」

「………いいよ。」

部屋に入ると尊はサイドテーブルの前に座って資料やらノート、パソコンなんかを広げていた。

「忙しかった?」

「いや。何?」

「…これなんだけど。」

泥で汚れてヨレヨレの箱を見せる。

「…何これ?随分年季の入った箱だな。これがどうかしたの?」




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