銀杏
これは…お母さんが書いた手紙だ。
宛名などはなく、封筒と思われたものは、送られてきた郵便の封筒を綺麗に剥がして裏返したものだった。
「誰宛だ?」
「さあ。何も書いてないよ。」
「読んでみたら?」
「……うん。」
緊張しながらゆっくりと読み進めていく。
お元気ですか?
あれから随分経ちますね。私は幸せに暮らしていますから安心して下さい。
あなたの子どもは『咲』と名付けました。毎日元気に保育所に通い、飛び回っています。
咲は水遊びが大好きで、毎年プールに入るのを楽しみにしてます。
あなたに似てるのかもね。
あなたが幸せでありますように祈っています。
「これって…お兄さんに宛てた手紙?」
「…そうなんじゃないか?『あなたの子ども』とか『咲』とか書いてあるし。」
「この手紙がもっと早く見つかってれば、こんなに遠回りすることなかったのかな。
お兄さんもいなくならずにすんだのかな。」