銀杏


尊の言葉は照れ臭い。
視線を外して横を向いた。

「咲。」

「ん?」

「俺…今の俺たちの関係、咲はどう思う?」

「どう思う…て……。」

考えたこともない質問をされて返事に困った。

どうしてそんなこと訊くの?
何が言いたいのだろう。

「俺はさ、幼い時からずっと一緒にいて、それが当たり前のように思ってた。
でも咲が大学の寮に入ったことで、いかに咲の存在が俺の中で大部分を占めてたのかよく分かったよ。
咲は?」

「わ…私?
私は…尊も知ってるでしょ。一度帰ってきたじゃない。」

「それは家族としてだろ。俺のことは?」

「…好きだよ。」

『好き』という言葉では言い表せない程に。

以前ならこんなこと言えなかった。
それは愛してるから?
大人になったから?
分からない。
でも素直に言葉が出てくる。
恥ずかしいなんて気持ちは湧いてこない。
だって今は尊と二人だけだもん。
何度でも言うよ。




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